Microsoft 365 のサインイン確認で「SMS」や「音声通話」しか使えない人は、2027年2月1日以降、サインイン時にパスキーの登録が必須になります。 管理者(グローバル管理者)と外部ユーザーは、2027年7月1日です。2026年11月時点の公式資料にもとづくと、中小企業がやることは、(1) 該当する人を調べる、(2) 移行先を決めて全員に案内する、(3) 年内に登録を終える、の3つです。
この記事は、個人による非公式の解説です。日付や仕様は変わる可能性があるため、設定を変える前に、末尾の「参考」の公式資料を確認してください。
何が、いつ変わるのか
Microsoft は、SMS と音声通話を「安全な認証方法として位置づけない」とし、Microsoft Entra ID から提供を終えると案内しています。代わりに、フィッシングに強い「パスキー」を、サインインの標準にします。日程は次のとおりです。
| 日付 | 何が起きるか |
|---|---|
| 2026年9月1日 | パスキーが標準のサインイン体験になる。SMS・音声が有効なユーザーには、パスキーが自動で有効になり、MFA のサインイン時に登録の案内が出る(既定では、何度でも後回しにできる) |
| 2027年2月1日 | Microsoft が提供する SMS・音声の送信が、管理者と外部ユーザーを除く全ユーザーで終了する。社内のゲストユーザーも、この日 |
| 2027年2月1日以降 | 使える MFA の方法が SMS・音声だけの人は、サインイン時にパスキーの登録が必須になる。登録しないと先へ進めず、この動作を止める設定はない |
| 2027年7月1日 | グローバル管理者と外部ユーザーで、SMS・音声が終了する。同じく、SMS・音声だけの人は、パスキーの登録が必須になる |
影響を受けるのは誰か
対象は、「使えるサインイン確認の方法が SMS・音声だけ」の人です。Microsoft Authenticator アプリなど、ほかの方法もすでに登録している人は、SMS が使えなくなっても、サインインできなくなるわけではありません。ただし、Microsoft はフィッシングに強い方法(パスキー、Windows Hello for Business など)への移行を勧めています。
とくに注意したいのは、次の人たちです。
- スマホを持たない、または個人のスマホを仕事に使いたくない社員(SMS だけで運用してきた場合)
- 取引先などの外部ユーザー(ゲスト):2027年7月1日が期限
- 管理者アカウント:2027年7月1日が期限ですが、管理者こそ、先に移行しておくのが安全です
まず、SMS・音声を使っている人を調べる
最初の作業は、人数と名前の洗い出しです。Microsoft は、SMS・音声が有効なユーザーを調べる PowerShell スクリプトを GitHub で公開しています。実行には、グローバル閲覧者、認証ポリシー管理者、セキュリティ閲覧者のいずれかの役割が必要です。スクリプトは「調べるだけ」で、設定は変えません。
あわせて、Entra 管理センターの「認証方法」にある「アクティビティ」のレポートでも、登録状況を確認できます。
移行先の選び方
移行先は、パスキーが基本です。公式資料では、パスキーを2種類に分けています。
- 同期パスキー:スマホやパスワード管理アプリに保存され、複数の端末で使える
- 端末固定のパスキー:Microsoft Authenticator のパスキー、Windows 上の Entra パスキー、FIDO2 セキュリティキーなど、1つの端末や物理キーに保存される
小規模な会社の現実的な選び方は、次のとおりです。
- 会社のパソコンで Windows Hello(顔・指紋・PIN)を使っている人:Windows Hello for Business など、すでに使える方法を確認する
- スマホを使える人:Microsoft Authenticator のパスキーを登録する
- スマホを使えない人、共用端末の人、管理者の予備:FIDO2 セキュリティキー(物理キー)を配る
規制や業務の都合で、どうしても SMS・音声が必要な人がいる場合は、2026年10月30日から、Microsoft Security Store で電話通信の事業者(初期は Soprano と Telesign が、限定公開)を選んで設定できます。ただし、事業者との契約が必要です。必要な人だけに絞るのが基本です。
進め方の例(4週間)
2027年2月1日の1か月前(2026年末)までに、全員の登録を終えるのが目標です。
- 第1週:該当者の洗い出し(上のスクリプト)。管理者と外部ユーザーの数も確認する
- 第2週:移行先を決め、社員向けの連絡を出す。まず管理者と数人で試す
- 第3週:全員に登録を依頼する。Entra 管理センターの「認証方法 → 登録キャンペーン」で、対象のグループを指定して、案内を出す方法がある(先に、パスキー(FIDO2)を認証方法として有効にしておく)
- 第4週:未登録の人を個別にフォローする
9月1日以降、SMS・音声が有効な人には、すでに案内が出始めている可能性があります。その案内は、既定では後回しにできます。年内に完了する、という期限は、自社で決めてください。
設定を変える前に:影響範囲・業務が止まるか・戻し方
| 操作 | 影響範囲 | 業務が止まるか | 戻し方 |
|---|---|---|---|
| パスキー(FIDO2)を認証方法として有効にする | 対象に指定したユーザー | 止まりません。使える方法が増えるだけです | 対象のグループを外す、または無効に戻す |
| 登録キャンペーンを有効にする | 対象に指定したグループ | 止まりません。案内が出るだけで、既定では後回しにできます | 対象のグループを外す、または状態を元に戻す |
| 自動の有効化を一時的に止める(Microsoft Graph の beta API で設定) | テナント全体 | 止まりません | 設定を元に戻す。2027年2月1日以降は、この設定に関係なく、期日どおり適用される |
| 何もしない | SMS・音声だけの人 | 2027年2月1日以降、パスキーを登録するまで、サインインできなくなります | 期日以降は、止める設定がありません。事業者を契約して SMS・音声を続ける方法だけです |
設定は、先に管理者と少人数で試し、問題がなければ全員に広げてください。クライアントなど、他社のテナントを触る場合は、必ず相手の承認を取ってから行ってください。
社員への連絡文例
件名:【お願い】Microsoft 365 のサインイン方法の変更について(◯月◯日まで)
◯◯の皆さん
Microsoft 365 にサインインするときの「SMS(携帯電話へのメッセージ)」による確認が、2027年2月1日以降、使えなくなります(Microsoft の仕様変更です)。
次回のサインインのときに表示される案内に従って、「パスキー」を登録してください。所要時間は約3分です。2027年2月1日までは、これまでの方法でもサインインできます。
登録がうまくいかない場合は、◯◯(担当者)まで連絡してください。
まとめ
SMS・音声だけに頼る人は、2027年2月1日(管理者と外部ユーザーは7月1日)までにパスキーなどへ移す必要があります。まず、該当する人が何人いるかを調べてください。 人数がわかれば、移行先と連絡の手間が見えます。
自社の設定の全体を確認したい場合は、M365・社内IT 自己点検(16問・約3分・無料)も使えます。「社員のMFAが、SMS・音声通話だけに頼っていませんか」という設問が含まれています。
参考
2026年11月時点で確認した公式資料です(日程は、2026年9月23日更新の資料による)。
- Passkeys by default and retirement of Microsoft-provided SMS and voice authentication:https://learn.microsoft.com/en-us/entra/identity/authentication/concept-sms-voice-retirement
- Passkeys (FIDO2) の概要:https://learn.microsoft.com/en-us/entra/identity/authentication/concept-authentication-passkeys-fido2
- Plan a passkey deployment in Microsoft Entra ID:https://learn.microsoft.com/en-us/entra/identity/authentication/how-to-deploy-phishing-resistant-passwordless-authentication
- Choose a telephony provider for SMS and voice authentication:https://learn.microsoft.com/en-us/entra/identity/authentication/concept-phone-providers
- SMS・音声の利用者を調べるスクリプト(Microsoft の GitHub):https://github.com/microsoft/entra-sms-voice-usage-analyzer