退職者のアカウントは、(1) パスワードのリセットとサインアウト、(2) メールの保存、(3) 端末のワイプ、(4) メールの引き継ぎ、(5) OneDrive の引き継ぎ、(6) ライセンスの整理、(7) アカウントの削除、の順に処理します。 公式資料は、この7つのステップで案内しています。とくに、メールの転送や共有メールボックスにする場合は、アカウントを削除してはいけない点が、見落としやすい落とし穴です。2026年11月時点の公式資料にもとづいて、順番と注意点を整理します。
この記事は、個人による非公式の解説です。仕様は変わる可能性があるため、作業の前に、末尾の「参考」の公式資料を確認してください。
7つのステップの全体像
| ステップ | 何をするか | 目的 |
|---|---|---|
| 1 | パスワードのリセット、全セッションのサインアウト、サインインのブロック | 退職者が、サービスや組織のデータに入れないようにする |
| 2 | メールボックスの内容を保存する | 後任者が使う、または法的な理由で保存が必要な場合に備える |
| 3 | モバイル端末のワイプとブロック | 端末から、組織のデータを消す |
| 4 | メールを別の社員へ転送する、または共有メールボックスに変換する | 取引先から、退職者のアドレスに届くメールを受けられるようにする |
| 5 | OneDrive と Outlook のデータへ、別の社員がアクセスできるようにする | 業務の引き継ぎ |
| 6 | Microsoft 365 のライセンスを外す、または削除する | ライセンスの再利用、コストの整理 |
| 7 | ユーザーアカウントを削除する | 退職者のアドレス宛のメールの受信が止まる |
ステップ1:サインインを止める
最初の作業は、パスワードのリセットです。ユーザー管理者、またはヘルプデスク管理者のロールで、標準ユーザーに対して行えます。ほかの管理者をサインアウトさせる場合だけ、グローバル管理者が必要です。
- Microsoft 365 管理センターで「ユーザー → アクティブなユーザー」を開く
- 対象のユーザーを選び、「パスワードのリセット」を実行する
- もう一度ユーザーを選び、「アカウント」タブの「すべてのセッションからサインアウト」を選ぶ
サインアウトの反映は、1時間以内です。アクセストークンが1時間有効なためで、残りの時間や、利用者が開いているページによって前後します。Outlook on the web を開いている場合は、別のタイルを開くか、ブラウザーを更新すると、サインアウトされます。すぐに切りたいときは、PowerShell の Revoke-MgUserSignInSession を使います。
「サインインのブロック」は、反映に最大24時間かかることがあります。すぐにアクセスを止めたいときは、先にパスワードのリセットを行ってください。メールへのアクセスを止めるには、Exchange 管理センターで、そのユーザーのメールアプリのアクセス(Outlook、IMAP、POP3、Exchange ActiveSync など)をオフにする方法もあります。
メールのセッションを終わらせる場合の反映までの時間は、操作する場所でも変わります。Exchange 管理センターや PowerShell は30分以内、Microsoft Entra 管理センターは60分、オンプレミスの環境は3時間以上が、公式資料の目安です。
ステップ2・3:メールの保存と、端末のワイプ
後任者が使う場合や、法的な保存の必要がある場合は、メールボックスの内容を保存します。法的な保持が必要な場合は、先に、保持(Purview の eDiscovery)を確認してください。
モバイル端末は、組織のデータを消すために、ワイプとブロックを行います。個人の端末に、組織のデータが入っている場合は、とくに必要です。
ステップ4:メールの引き継ぎ(転送か、共有メールボックスか)
退職者のアドレスに、取引先からメールが届き続ける場合の対応は、2通りあります。
| 方法 | 特徴 |
|---|---|
| 別の社員へ転送する | 新しく届くメールだけが、転送される。過去のメールは移らない |
| 共有メールボックスに変換する | 過去のメールと予定表が、そのまま共有メールボックスに残り、複数人でアクセスできる。50GB未満なら、ライセンスが不要。50GBを超える場合は、ライセンスが必要 |
どちらの場合も、アカウントを削除してはいけません。 公式資料は、転送や共有メールボックスは、アカウントが残っていることが前提だと、はっきり書いています。また、コンプライアンスの理由で、メールボックスが非アクティブになっている場合は、転送も、共有メールボックスへの変換も、うまく動かないとされています。
あわせて、退職者の予定表の会議を、すべてキャンセルしてください。会議室や備品の予約が、残ったままだと、その間は予約できません。
なお、社外のアドレスへの転送は、外部への自動転送を禁止している場合、動きません。社内の別の社員への転送や、共有メールボックスは、影響を受けません。
ステップ5〜7:OneDrive、ライセンス、アカウントの削除
保持期間の決まりが、ここで効いてきます。
- アカウントを削除すると、OneDrive と Outlook の内容は30日間保持されます。この間は、アカウントを復元して、内容にアクセスできます
- ライセンスを外す(または削除する)と、メール・連絡先・予定表は、30日間保持されたあと、完全に削除されます
- ライセンスを外しても、アカウントを削除していなければ、OneDrive の内容は、30日を過ぎてもアクセスできます
- アカウントを削除すると、約30日間は無効な状態になり、その間は復元できます。その後は、完全に削除されます
削除する前に、OneDrive と Outlook のデータへ、別の社員がアクセスできるようにしておくことを、公式資料は勧めています。
会社がオンプレミスの Active Directory から同期している場合は、Microsoft 365 管理センターではなく、オンプレミスの Active Directory で、削除と復元をします。
設定を変える前に:影響範囲・業務が止まるか・戻し方
| 操作 | 影響範囲 | 業務が止まるか | 戻し方 |
|---|---|---|---|
| パスワードのリセット、全セッションのサインアウト | 対象の退職者だけ | 止まりません(本人は、再サインインを求められます) | 新しいパスワードを設定する |
| サインインのブロック | 対象の退職者だけ | 止まりません | ブロックを解除する |
| 共有メールボックスに変換する | 対象のメールボックス | 止まりません | 個人のメールボックスに戻せる(公式資料) |
| ライセンスを外す | 対象の退職者のデータ | 30日後に、メール・連絡先・予定表が完全に削除されます。引き継ぎの前に外さないでください | 30日以内に、ライセンスを再び割り当てる(30日は、データが保持される期間) |
| アカウントを削除する | 転送・共有メールボックスを含む、アドレス宛のメール | 転送や共有メールボックスが動かなくなり、宛先のメールの受信が止まります | 約30日以内なら、復元できる |
同期されたアカウント(ハイブリッド)の場合は、削除・復元の操作が違う点に注意してください。クライアントなど、他社のテナントで作業する場合は、必ず相手の承認を取り、データの引き継ぎ先を、相手の責任者と決めてから行ってください。
退職日のチェックリスト
- 退職日に、パスワードをリセットし、全セッションをサインアウトした
- サインインをブロックした(反映に最大24時間)
- 必要なら、メールアプリのアクセスをオフにした
- メールボックスの内容を、必要に応じて保存した(法的な保持の確認を含む)
- モバイル端末のワイプとブロックをした
- メールの引き継ぎ方法(転送か、共有メールボックスか)を決め、設定した
- 会議の予定をキャンセルした
- OneDrive と Outlook のデータに、後任者がアクセスできるようにした
- アカウントの削除は、引き継ぎが終わるまで、しない
まとめ
退職者の対応は、順番を間違えると、メールが読めなくなったり、データが失われたりします。まず、「退職日に、パスワードのリセットとサインアウトを行う」という手順を、社内で決めてください。 アカウントの削除は、引き継ぎが終わってからです。
自社の設定の全体を確認したい場合は、M365・社内IT 自己点検(16問・約3分・無料)も使えます。「退職日にアカウントを無効化する手順が決まっていますか」という設問が含まれています。
参考
2026年11月時点で確認した公式資料です。
- Remove a former employee - Overview:https://learn.microsoft.com/en-us/microsoft-365/admin/add-users/remove-former-employee?view=o365-worldwide
- Step 1 - Prevent user sign-in and block access to Microsoft 365:https://learn.microsoft.com/en-us/microsoft-365/admin/add-users/remove-former-employee-step-1?view=o365-worldwide
- Step 4 - Forward a former employee's email or convert to a shared mailbox:https://learn.microsoft.com/en-us/microsoft-365/admin/add-users/remove-former-employee-step-4?view=o365-worldwide
- Step 7 - Delete a former employee's user account:https://learn.microsoft.com/en-us/microsoft-365/admin/add-users/remove-former-employee-step-7?view=o365-worldwide